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若いエンジニアへ

エンジニアなら誰でも突貫工事に喜びを見出した経験がある。深夜2時の夜食を共にした同僚のことは、その職業人生を通じて忘れることはない。しかし、そこにいかなるドラマがあろうとも、突貫工事は例外である。これを常態としてはならない。

メーカーの組込みプログラマとしてエンジニアのキャリアをスタートした私は、「よい製品はよいプロセスから生まれる」ことを頭に叩きこまれた。素晴らしい製品を生み出す工場は静かである。常に誰かが大声で叫んでいるような工場には明らかにプロセス上の問題が認められ、素晴らしい製品を生むことは決してない。

本物のエンジニアは突貫工事を好まない。突貫工事とはプロセス上の誤りであり、つまり誰かが大声で叫ばなければならないということだからである。エンジニアの仕事は計画され、コントロールされたものでなければならない。

長時間労働によって成果を生み出そうとすることも、やはり例外としなければならない。長時間労働もプロセス上の誤りである。長時間労働とは「体力勝負」の世界であり、技術の専門家たるエンジニアの地位を貶めるものである。

エンジニアの創造性を引き出すものは、長時間労働ではなく集中である。誰もが知っているように、集中とは1日18時間持続するものではない。普通の人は2, 3時間がせいぜいである。

どうすればこのわずか2, 3時間の集中に入れるのかを知る者こそ本物のエンジニアである。ある人にとっては深夜や早朝かもしれない。朝メールをチェックして、お気に入りのWebサイトを見て回ったあとでないと集中できないという人もいる。

かつて、NHKで「プロジェクトX」という人気番組があった。そこで紹介されるプロジェクトは、ほとんどすべてが突貫工事と長時間労働のドラマだった。視聴者に、あたかも、突貫工事と長時間労働こそが素晴らしい製品を生み出すかの誤解を与えるものであった。

あの番組を見て違和感を覚えたエンジニアは多いはずだ。私が駆け出しのエンジニアの頃上司から受けたアドバイスは、あのような番組を真に受けるなということだった。メーカーを退職した今でも、私は「よい製品はよいプロセスから生まれる」というこのコンセプトが正しいと思っている。

若いエンジニアには、よいプロセスは退屈に見えるかもしれない。しかし、本物のエンジニアにとっては、日々の秩序の中にこそ素晴らしいドラマがあるのである。