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ダウニーカフェの思い出

藤沢に住んでいた頃、ダウニーというカフェがあった。アメリカンスタイルのハンバーガーがウリだったが、サンドイッチやパスタも素晴らしかった。ケーキも手作りで、種類も多く美味しかった。ケーキだけを買って帰るというお客さんも多かった。

私も週末のお昼にはよく通ったものだった。ランチタイムに行くと大変混雑しているので、あえて少し早めか少し遅目を狙って行ったものだった。

あるとき、ダウニーが閉店してしまった。マスターがしんどくなってしまったらしい。伝え聞いたところによると、「二度と飲食はやらない」と言い残して去って行ったということだった。

マスターは物静かなおじさんで、いつもは調理場にいた。接客はアルバイトの若者にまかせていたが、お店が暇なときは接客してくれることもあった。

仕入れから調理まで、すべてマスターひとりでやっていたということだった。ハンバーガーもケーキも全部ひとりで。すべてが卓越した仕事だった。すべてのメニューにおいて、街のカフェのレベルを超越していた。

素晴らしい仕事をすることはできる。しかし、それですべてがうまくいくという訳ではない。ダウニーの場合は、マスターを支えてあげられる誰かが必要だったのかも知れない。マスターはカフェ界のスーパーマンだったのかも知れないが、スーパーマンには相棒が必要だ。

その後、私は東京に引っ越してきた。オシャレなカフェをよく見かける。悪くはないが、ダウニーにはかなわない。マスターは今何をしているのか知らないが、私の思いとしては、どこかでまた素晴らしいカフェをやっていてほしいと思う。今度はしんどくならない方法で。