エンジニアの幸せ

エンジニアにとっての幸せとは何だろうか。一般的には、エンジニアとは何かを作る人だ。橋を作る人、ビルを作る人、電子機械を作る人、ソフトウェアを作る人、これらは皆エンジニアだ。よって、創造の喜びというのがひとつの答えとなるのではないだろうか。…

名探偵の秘密

ソフトウェアのカスタマーサポートという仕事をしていると、顧客から様々な問題が持ち込まれてくる。先日取り組んでいたのは、カーネル内のある構造体のメンバ変数の不整合によりカーネルパニックが発生してしまうという問題だった。この手の障害解析には問…

ダウニーカフェの思い出

藤沢に住んでいた頃、ダウニーというカフェがあった。アメリカンスタイルのハンバーガーがウリだったが、サンドイッチやパスタも素晴らしかった。ケーキも手作りで、種類も多く美味しかった。ケーキだけを買って帰るというお客さんも多かった。私も週末のお…

ハックは遍在する

数年ぶりにポール・グレアムの『ハッカーと画家』を読みなおした。この本が出版されたのは2005年。当時大学院の修士1年生だった私は、就職活動のための新幹線での移動中にこの本を読んでいた。あれから10年経った。紆余曲折あって、今は組込みOSのテクニカル…

明日のための仕事

本日をもってミラクル・リナックスを退職する。2年半という短い間だったが、たくさんの方々にお世話になった。お礼を申し上げる。私のミラクルでの仕事を振り返ってみると、最大の貢献と言えるものはLinuxに関連することではなかった。エンジニアリングです…

社会人として

ここ数年、私が使うのを避けている言葉がある。「社会人」がそれである。この言葉は、「社会人として〜」という使われ方をする。人が(私も人である)「社会人として〜」と言っているとき、この「社会人」とはいったい何を意味するのだろうか?「社会人」こ…

若いエンジニアへ

エンジニアなら誰でも突貫工事に喜びを見出した経験がある。深夜2時の夜食を共にした同僚のことは、その職業人生を通じて忘れることはない。しかし、そこにいかなるドラマがあろうとも、突貫工事は例外である。これを常態としてはならない。メーカーの組込み…

エンジニアのジレンマ

技術は何を作ればいいかは教えてくれない。技術は如何に作ればよいかを教えるのみである。世界で最も優れたエンジニアとは、何を作ればいいか教えてくれれば何でも作ってみせると約束する者である。優れた技術を持つはずのエンジニアが、精巧なゴミを作り続…

Microsoftに捧ぐ

理論的にはソフトウェアが壊れるということはない。長く使っているうちにビットがすり減ってしまうということはあり得ない。何かがうまく動かないのは、はじめから壊れていたのだ。それにも関わらず、世界中のプログラマが、ソフトウェアが壊れていくさまを…

『Operating System Design: The Xinu Approach, Linksys Version』を読んだ

実際のOSのソースコードを示して解説する教科書といえば、TanenbaumのMINIXが有名である。本書は、Dougras ComerによるXINUというOSにつての同様の趣旨の本である。このような本があるという事は、以前から知ってはいた:XINU("XINU is Not UNIX"の略)オペ…

忍び寄る全体主義

私が三菱電機を辞めた理由のひとつは、組織のもつ全体主義的傾向を嫌ってのことだった。全体主義とは、皆が同じ考えをもつことではない。そんなことは不可能だ。全体主義とは、皆が同じ考えをもつことを強制することである。従って、全体主義のもとでは、人…

LispでOSを書く

(このエントリは、Lisp Advent Calendar 2012 の22日目である)ELIS復活祭のとき、ELISのTCP/IPプロトコルスタックを書いたという方とお話する機会があった。ELISのプロトコルスタックはもちろんLispで書かれていた。その方がおっしゃるには、「C言語はよい…

豊かな社会

私の母校は、工学部のみの小さな単科大学だ。工学部のみの大学であっても、いわゆる一般教養の授業がある。そのための常勤の教員もいる。特に人文社会系の講義のことを、私たちは単に「社会系」と呼んでいた。私たちにとって、「社会系」の授業は悩みの種だ…

『オペレーティングシステム 設計と実装 第3版』を読んだ

1953年、ワトソンとクリックによりDNAの二重らせん構造が発見されたとき、生命には神がかり的なものは何もないことが明らかとなった。以来、生命をめぐる神学上の諸々の問題は、科学とエンジニアリングの問題となった。本書を読めば、読者は、オペレーティン…

Unixの自由

TechLION vol.10に行ってきた。村井純さんのお話を聞いてきた。村井純さんといえば、Unixとインターネットを創った男だ。もう古い本だが、村井純さんは、Bachの『UNIXカーネルの設計』の翻訳者でもある。この本は、私が初めて読んだカーネルの本だ。この本で…

リアルタイム・コンピューティングとカント主義

ミラクル・リナックスに入社してちょうど3ヶ月が経った。試用期間が終わり、正式(?)に採用となった。散々遅刻したのにクビにならなかったので、ほっとしている。これからはフレックスタイムが使えるので、大いに寝坊できるとうものだ。4月末に、「実績レ…

リアル本屋の楽しみ

亀有に引っ越してきて非常に不便なのが、近くに大きな本屋がないことだ。藤沢には、駅前にジュンク堂と有隣堂があり、まさに本屋戦争の様相を呈していた。亀有だって住んでいる人の数はそれなりなのだから、もうちょっと大きな本屋があってもよさそうなもの…

技術者の倫理

ミラクル・リナックスに入社して1ヶ月経った。3月からまた新しい人(NetBSDハッカー!!)が入ったので、昨日は歓迎会だった。つまりは飲み会なのだけれども、ミラクルの人たちと話していてひとつ驚いたことがある。彼らは、会社の飲み会で技術の話をするの…

タクシードライバー

先日、飲み過ぎて上野で終電を逃したことがあった。仕方がないので、上野から亀有までタクシーで帰った。4000円ほどだった。普段、私はあまりタクシーに乗ることがないのだが、そのとき私の乗ったタクシーには、後部座席に小さな液晶モニタが設置されていた…

タンメンのうまい店

転職に伴い、藤沢から亀有に引っ越してきた。そろそろ2週間半が経つ。ようやく、亀有にも慣れてきたので、最近はタンメンのうまい店を探している。藤沢には「千里」という中華料理屋があって、そこのタンメンがなかなか美味しかった。藤沢駅前のダイヤモンド…

ランチの話題は?

2月からミラクル・リナックスで働いている。まだ3日しか働いていない。この3日間は、ほとんど研修だった。来週から、本格的に業務に入るのだと思う。実は、入社して早速、非常に困難な事態に陥っている。それは、エンジニアリング上の問題ではない。ヒューマ…

三菱を去る日

1月いっぱいで三菱電機を退職した。新卒で入社してから、この4月で丸6年になるところだった。実は、退職にあたってのエントリを、同じタイトルで前々から用意していた。三菱の官僚主義に辟易していた私は、三菱のやり方について、そのエントリでこき下ろす…

『一般意志2.0』を読んだ

今年の正月休みも実家へ帰っていた。1日だけ地元の友人たちと会い、あとは本を何冊か読んで過ごした。その中に、東浩紀さんの『一般意志2.0』というのがあった。帰省前に、藤沢のジュンク堂で見かけ、Twitterで話題になっているのを思い出して購入したもの…

ハッカーセントリックな企業文化

TechLION vol.5に行ってきた:http://www.usptomonokai.jp/wp/?p=2068自称プロの酔っぱらいである楽天のよしおかさんが、「ハッカーセントリックな企業文化」について語るということだった。Twitterを見ていると、すでに楽屋でビールを飲んでおられたようだ…

xv6を読む:メモリアロケータ

xv6

実行時に、プロセスやカーネルにページを割り当てるため、xv6はメモリアロケータを使用する。メモリアロケータは、未使用のページのフリーリストを管理している。カーネルからの要求に従って、フリーリストからページを割り当てる。カーネルの起動処理で、フ…

xv6を読む:アドレススペースの作成

xv6

xv6というOSがある。これは、UNIX V6をベースに(?)MITで開発された教育用のOSである。x86アーキテクチャで動作する。MITなどのアメリカの大学が凄いと思うのは、授業の教材や講義の録画をネットで公開してしまうことである。xv6もテキストとソースコード…

スキルかセンスか?

ちょっと前の話になるのだが、「デザイナ&エンジニア交流会」というのに参加してきた:http://design1.chu.jp/setucocms-pjt/?p=1770SetsucoCMSというオープンソースのCMSがあって、それを作っている子たちによく遊んでもらっている。今回、彼らが勉強会を…

電子書籍は安い?

Amazon Kindleの日本語版が年内登場とか言っている。日本でも書店や出版社などが独自に電子書籍を出していたが、各社ばらばらで足並みが揃っていないようで、私は買い控えていた。Kindle DXですでに英語版を利用している身としては、今回のAmazonの発表は非…

いかに作るか、何を作るか

今日は朝から、Twitterで、SIerがどうのこうのというツイートが流れている。あるあるネタで、Excelでバージョン管理とか、私も大いにあるあるである。何だかSIerが皆に嫌われているようにも見えるが、SIerが好きで頑張っている人もたくさんいるはず。一部の…

ネコのこと

わけあって実家へ帰ってきている。実家ではネコを飼っている。私が大学へ入学したのが2000年で、その年の冬にやってきた。その時はまだだいぶ若く、夜になると家の中を走りまわったりしていた。あれから11年、もう13歳くらいになったのではないかと思う。…