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スキルかセンスか?

ちょっと前の話になるのだが、「デザイナ&エンジニア交流会」というのに参加してきた:

http://design1.chu.jp/setucocms-pjt/?p=1770

SetsucoCMSというオープンソースCMSがあって、それを作っている子たちによく遊んでもらっている。今回、彼らが勉強会をやるということで、私も誘われた。デザイナやエンジニアと言っても、ここでは「Web」デザイナ、「Web」エンジニアである。Webにとんと疎い私としては、そこはまったくの異文化圏である。そこでの交流は、なかなか刺激的であった。

中でも非常に新鮮だったは、普段接することのないデザイナと話す機会を持てたことだ。そして、彼らと話してわかったことには、どうやら彼らは、デザインがセンスだとエンジニアに思われていることに強い不満を持っているらしい。

確かに、「デザイン」というと、何だか芸術的なものを連想してしまう。実際、私もデザインはセンス、つまり才能によるところが大きいのだろうと何となく思っていた。しかし、デザイナの彼らに言わせれば、デザインには理論があり、練習によって習得できるものであって、したがってデザインはスキルであるという。

ここでちょっと野球を考えてみる。長嶋茂雄さんといえば往年のスター選手だ。あるとき、ホームランの打ち方を聞かれた長嶋さんは、「ボールが来たら、よく見て打て」と大真面目に答えたそうだ。長嶋さんにとっては、それがホームランの理論であり、練習によって習得したということだろう。

デザイナが、デザインがセンスだというエンジニアの思い込みに不満を持つということは、その裏返しとして、彼らは、エンジニアリングはスキルだと思っているのかもしれない。しかし、この思い込みが必ずしも正しくないことは、プログラマなら誰もが知っている。

確かに、プログラミングには理論が存在する。ソフトウェア工学と呼ばれているものがそれだ。プログラミングの外にいる人の目には、プログラミングとはソフトウェア工学の実践であって、練習によって習得できるものと映るかもしれない。しかし、そうだとしたら、どうしてこんなにも多くのソフトウェア開発プロジェクトが失敗するのだろう? プログラマはみんなあまりにも怠惰過ぎて、練習を怠っているということだろうか?

私が思うに、プログラミングは野球みたいなものだ。ソフトウェア工学は長嶋さんのホームラン理論に似ている。この理論は間違ってはいないが、本当にホームランを打とうとするなら、理論以外の何かが必要だ。そして、重要なことは、あの長嶋さんでさえ、毎回ホームランを打てたわけではないということだ。

交流会の後の懇親会で、私はデザイナの一人に、「エンジニアリングはスキルですか?」と聞かれた。私は、「ある部分はスキルでしょう。しかし、センスが必要な部分もたくさんありますよ」と答えた。この時は酔っ払っていたのでうまく説明できなかったが、私が言いたかったのは、つまるところエンジニアリングとはホームラン理論だということだ。

だから、デザイナは、自分たちがやっていることがスキルかセンスかなんて悩む必要はないと思う。たぶん、デザインもホームラン理論だ。部外者から見るとセンスに見えるかもしれないが、実際にはスキルとセンスの混合物なのだろう。

最後に、今回の交流会を主催し、そして私を呼んでくれたSetsucoCMSのみんなにお礼を言おう。彼らはとても若く、パワフルで、情熱に溢れている。そして何より、彼らはものづくりに対してとても真面目である。彼らの今後の活躍には私は大きく期待するし、また、今後もこういった交流会に呼んでほしいと思う。