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リアル本屋の楽しみ

亀有に引っ越してきて非常に不便なのが、近くに大きな本屋がないことだ。藤沢には、駅前にジュンク堂有隣堂があり、まさに本屋戦争の様相を呈していた。亀有だって住んでいる人の数はそれなりなのだから、もうちょっと大きな本屋があってもよさそうなものである。

一時期は、本はすべてAmazonで買っていた。リアル本屋で面白そうな本を見つけても、家へ帰ってAmazonで注文していた。Amazonにはリコメンド機能があるからだ。Amazonで買い物をすればするほどリコメンド機能が賢くなる。このリコメンド機能をかなり頼りにしていた。

しかし、最近、リコメンド機能などどうでもよくなってきた。要は、似たような本ばかり読んでもしょうがないのだ。読書も娯楽である。新しい知識と出会う楽しみがある。幅広い、ときには意外な本が読みたいのだ。

この点において、Amazonのリコメンド機能は退屈だ。いわゆる「紙おむつとビール」理論は、売る側にとっての「意外性」であって、買う側にとっての「意外性」ではない。買う側は、そもそも、最初から紙おむつとビールを買いに来ているのである。

リアル書店のいいところは、そこに人間の意思が働いていることだ。大きな本屋へ行くと、新刊書と売れ筋のコーナーの他に、様々な「フェア」が催されていることがある。

例えば、「経済学の古典を読もう」みたいなフェアが開催されていて、そこにケインズの「一般理論」が置かれていたりする。非常に有名な本であるが、普通の人は読まない。そもそも、そういう本を読もうと思いつかない。しかし、そういう本が置かれていて目に入れば、読んでみようかなという気になるかも知れない。

亀有に大きな本屋がないので困っていたのだが、よく考えたら神保町まで行けばいいことに気がついた。神保町は、三田線で大手町の一個隣りである。大手町までは定期で行ける。別に、希少な古本を探しているわけではないが、世界最大の古書の街なら、「意外性」に出会えること間違いない。

3月末にリニューアルオープンしたばかりの、東京堂書店へ行ってみた。フロア面積としては、近くの三省堂本店などにははるかに及ばない。しかし、リアル本屋の楽しみを凝縮したような店である。1階から3階まで見て回ったら疲れてしまった。嬉しいことに、カフェが併設されている。

Kindleの日本進出が近いと言われている。喜ばしいことである。しかし、そうなると、リアル本屋の存在はますます重要になる。はじめから欲しい本がわかっているのなら、人々はネットで買うだろう。リアル本屋は、「なんか面白い本はないか?」という人々に応えねばならない。そのとき、どういう本を出してくるか? 書店員の腕の見せどころだ。