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日本の得意なシステムエンジニアリング

もう先月のことだが、中国高速鉄道(いわゆる中国新幹線)の事故がおきた。事故の犠牲者には非常に気の毒だと思う。しかし、この事故は、日本の新幹線がいかに優れているかを世界に示すものでもあった。

日本の新幹線は、開通以来一人の死亡事故も出していない。先の東日本大震災に置いても、新幹線は安全に停止し、かつ迅速にダイヤ復旧することができた。

東京オリンピックの前年の1964年に開通した東海道新幹線であるが、この新幹線計画は実は戦前からの国鉄の悲願だった。戦前は、「新幹線」とは呼ばず、「弾丸列車」と呼ばれた。

弾丸列車は、電車方式ではなく機関車方式であった。区間も、東京ー大阪間をゆうに越え、東京ー南京間を結ぶものであった。もちろん、南京まで列車で行くためには海を渡らなければならない。九州から船で朝鮮まで列車を運ぶ方式、九州から朝鮮までトンネルを掘る(!!)方式が考えられたという。

一方の中国新幹線は、開通までわずか5年。中国は急ぎすぎた。いくら日本やヨーロッパから技術導入しても、やはり短期間での付け焼刃の技術ではダメだった。日本の新幹線は、戦前から考えに考えつくされたものなのだ。

新幹線はシステムだ。私もエンジニアなのでよくわかるが、システムというものは、単に要素技術がそろえば作れるというものではない。それぞれの要素技術を組み合わせてシステムとする力、システムエンジニアリング力とでもいうものが必要だ。

私は、このシステムエンジニアリングこそが日本の生き残る道だと思っている。もう家電やケータイは韓国や台湾に任せればよい。彼らのほうが良い仕事を安くできるだろう。

日本は、実はシステムエンジニアリングが得意だ。新幹線はもちろん、他にもプラント(日本の浄水場の水は世界一安全)、発電所(日本の原発も世界一安全。議論はあるだろうが、少なくとも先の大震災までは)などなど。

しかし、例えば新幹線は、日本の主要な輸出品目ではない。最近になってようやく海外への売り込みが始まったばかりである。しかも、JR東海JR東日本で別々に売り込むなど、これでは買う方も混乱するのではないか。

中国新幹線は、日本の重工メーカーが車両技術を輸出した形になっている。しかし、新幹線は単なる車両ではない。システムだ。だから、単に要素技術としての車両を売るのではなく、新幹線としてのシステムを売るべきだった。

よく言われるように、国鉄民営化の際、単純にJRを地域で分けてしまったのがよくない。地域で分けるのではなく、「JR新幹線株式会社」を作るべきだった。そうして、新幹線に関する運用ノウハウをすべてここに集約し、このノウハウとセットで新幹線を売り出すべきだった。

大震災以降、日本再生・経済復興が叫ばれる。単に日本経済を「もとに戻す」のではなく、「次へ進める」ものであってほしい。