日本の得意なシステムエンジニアリング
もう先月のことだが、中国高速鉄道(いわゆる中国新幹線)の事故がおきた。事故の犠牲者には非常に気の毒だと思う。しかし、この事故は、日本の新幹線がいかに優れているかを世界に示すものでもあった。
一方の中国新幹線は、開通までわずか5年。中国は急ぎすぎた。いくら日本やヨーロッパから技術導入しても、やはり短期間での付け焼刃の技術ではダメだった。日本の新幹線は、戦前から考えに考えつくされたものなのだ。
新幹線はシステムだ。私もエンジニアなのでよくわかるが、システムというものは、単に要素技術がそろえば作れるというものではない。それぞれの要素技術を組み合わせてシステムとする力、システムエンジニアリング力とでもいうものが必要だ。
私は、このシステムエンジニアリングこそが日本の生き残る道だと思っている。もう家電やケータイは韓国や台湾に任せればよい。彼らのほうが良い仕事を安くできるだろう。
日本は、実はシステムエンジニアリングが得意だ。新幹線はもちろん、他にもプラント(日本の浄水場の水は世界一安全)、発電所(日本の原発も世界一安全。議論はあるだろうが、少なくとも先の大震災までは)などなど。
しかし、例えば新幹線は、日本の主要な輸出品目ではない。最近になってようやく海外への売り込みが始まったばかりである。しかも、JR東海とJR東日本で別々に売り込むなど、これでは買う方も混乱するのではないか。
中国新幹線は、日本の重工メーカーが車両技術を輸出した形になっている。しかし、新幹線は単なる車両ではない。システムだ。だから、単に要素技術としての車両を売るのではなく、新幹線としてのシステムを売るべきだった。
よく言われるように、国鉄民営化の際、単純にJRを地域で分けてしまったのがよくない。地域で分けるのではなく、「JR新幹線株式会社」を作るべきだった。そうして、新幹線に関する運用ノウハウをすべてここに集約し、このノウハウとセットで新幹線を売り出すべきだった。
大震災以降、日本再生・経済復興が叫ばれる。単に日本経済を「もとに戻す」のではなく、「次へ進める」ものであってほしい。